CGM New Harmony Church

動物たちの愉快な日常
童話

童話『農夫と青いカササギ』〜第六章 王の果樹園で働く〜

さて、タダシとトモヨが住んでいる国の王は素敵な果樹園を持っていましたが、この年、王の果樹園を任されていた臣下が病気になって務めを続けられなくなってしまいました。そこで王は全国に命令を出し、新しく果樹園を任せる人を選ぶために有能な農夫を集めさせました。タダシはその時、荒れ果てた自分の家の畑を再びきれいにして、かつてのようにそこで農作をしていましたが、王の命令が田舎にあるハコブネ村にも届くようになりました。

(王の使い)「この村は山奥にあるうえにそれなりに規模が大きいから、王の果樹園を任せられる人がいそうだと思ってやってきました。誰か王の果樹園で働くのにふさわしい人はいませんか?」

村人たちは皆山の恵みとして木の実を採って食べたことはありましたが、自分で育てたことはなかったため、王の使いの呼びかけに応じる人はいませんでした。王の使いははるばる田舎の山奥にやってきたにもかかわらず、誰一人自分の呼びかけに応じる人がいないのを見て、次第に腹が立ってきました。

(王の使い)「これほど実のなる木が山に生えているのに、一人も果樹園を扱える人がいないとはどういうことなのか。王の命令でもなければこんな田舎の山奥に誰が来るものか。せめて一人でもつれて行かないと私も王の前で面子が立たない」。

王の使いは決心して村を回りましたが、無理につれて行かれて、王の前で自分が何もできないことが分かったら恐ろしいので、村人たちは一層恐れてさまざまな理由をつけて断りました。そうしてとうとう王の使いがタダシの家にもやってきました。

(王の使い)「この家には柿の木があるな。畑は小さいが、穀物もよく育っている。やったぞ、この家の住人こそ私が探していた人間に違いない。

すいません、誰かいませんか?」
(タダシ)「はい、ここにおります」。
(王の使い)「こんにちは。畑を耕しているのはあなたですか?」
(タダシ)「はい、そうですが、どういった御用でしょうか?」
(王の使い)「王の果樹園を任されていた者が病で務めを果たせなくなってしまいました。私はあなたなら王の果樹園を任せられるのではないかと見ています。私と共に都に来てください。最も多くの実をみのらせた者に王は果樹園を任せると言っておられます」。
(タダシ)「せっかくのお話ですが、私は畑で穀物を育てることについては多少お力になれるかもしれませんが、果樹園を管理したことはないのです」。
(王の使い)「穀物がうまく育てられるなら応用が効くでしょう、それにあなたは庭で柿の木を育てているではないですか。とにかく私と共に都に来てください。私はすでにあなたを選びました。明日の朝には都に向けて出発するので、それまでに身支度を整えておいてくださいね」。

タダシは柿の木は自分のものではないと言いたかったのですが、王の使いは足早に行ってしまいました。タダシは困惑しましたが、どうしようもなさそうだったので、トモヨに話して都に行くことにしました。

(タダシ)「王の果樹園の管理なんてとんでもない。全く経験のないことだ。でも行くしかなさそうだから、ひとまず行って、どこかで体調が優れないと言って帰ってくるよ」。

翌朝、王の使いが迎えに来たので、タダシは王の使いと共に都に上っていきました。

都に着くと、全国から集められた農夫たちが王の前につれてこられました。

(王)「諸君、私全国からはるばるよくぞ集まってくれた。諸君の腕によって私の大切な果樹園がたくさんの実をみのらせるようになるのを楽しみにしている。そして一番たくさんみのらせた者には私の果樹園を任せようと思っている。頑張ってくれたまえ」。

さて、早速農夫たちは各自が任された場所で作業を始めました。タダシはとにかく畑を耕すのと同様に木の周りを深く掘って肥料をあげることから始めました。農夫によってやり方はまちまちで、ある人は一生懸命雑草を抜いていました。

さて、タダシは肥料をやるのを終えて木の下で休んでいました。

(タダシ)「はぁ…。肥料をあげることだけはやったけど、これから何をしたらよいのだろう?」

するとどこからか青いカササギが空高く飛んできて、何かを落としてそのまま飛び去っていきました。カササギが落としていったものはタダシの頭にぶつかって地面に落ちました。タダシが拾って見てみると、それは虫の喰った木苺でした。

(タダシ)「あんなに高いところから落としたのに僕の頭に当たるなんて、すごい偶然だ。これは木苺か。でも虫が喰ってるな。鳥もそれを分かって捨てたのかな」。

タダシはその木苺を捨ててまた考えました。

(タダシ)「あとは待っていればよいのだろうか」。

するとまたどこからか青いカササギが飛んできて、前と同じように何かを落としてそのまま飛び去っていきました。その落ちたものはやはりタダシの頭にぶつかって地面に落ちました。タダシがそれを拾って見てみると、それは虫の喰ったみかんでした。

(タダシ)「痛っ!また当たった!こんなことがあり得るのか!今度はみかんか。大きいから痛かったぞ、あの鳥め。ん?どうやらこれも虫が喰ってるようだ。鳥が続けて虫の喰った果物を捨てていくなんて珍しいな」。

タダシはそう言いながら、ふとが自分管理している果物を消毒しないといけないという考えが浮かんできました。

(タダシ)「そうだ、果樹園の木も消毒しないと虫に喰われちゃうじゃないか」。

そうしてタダシは立ち上がって木々を回って消毒をしました。

少しして、一部の農夫たちが慌てていました。タダシがそのうちの一人に尋ねました、

(タダシ)「あの、ずいぶん慌てているようですが、どうかしましたか?」

その農夫は答えました、

(農夫1)「昨日の夜にどこからかたくさん虫が湧いてきて、木が虫に喰われてしまいました。葉っぱがぼろぼろで、これでは今年は実を結ばないかもしれないし、もしかしたら木自体が枯れてしまうかもしれません」。

タダシはそれを聞いて、自分がちょうど少し前に薬を撒き終わったのを思って安心しました。

またしばらく経って、夏になり、木が少しずつ実を実らせ始めました。タダシは木陰で休みながら考えました。

(タダシ)「もうすぐ夏も終わるな。ちょっとずつ実が付き始めたようで良かった。王の前で何も実らなかったら大変なことになるところだった。あとはこのまま待っていればいいかな」。

タダシが木陰でそう言って休んでいると、どこからか青いカササギが飛んできて、タダシが休んでいる果樹の上に止まりました。そして何度も枝の上で飛び跳ねて枝を揺らしました。タダシが何だろうと上を見上げると、揺れた枝から一つの実が切れてタダシの頭の上に落ちてきました。

(タダシ)「痛っ!ああ、これは実じゃないか!何をするんだ!せっかく実り始めていたのに!」

タダシがそう言っているうちにカササギは飛び去っていきました。

(タダシ)「すぐ飛んでいったからよく見えなかったけど、カラスかな。迷惑な鳥だな。今度来て揺らし始めたらすぐに追い払わないと」。

さて、日が暮れかけた頃、カササギがまた飛んできて、雑草の掃除をしているタダシの頭の上で枝を揺らし始めました。タダシはすぐに追い払おうとしましたが、カササギはより高い枝に移って一層激しく揺らして実を落としてきました。

(タダシ)「ああ、もう、やめろったら!」

少ししてカササギはその場から飛び去っていきました。

(タダシ)「どうしたらよいのだろう。あんなことやられたら、せっかく実っても全部落ちてしまう」。

タダシはなんとか鳥が来ないようにできないかとも考えましたが、全然良いアイデアが浮かびませんでした。最終的に思い浮かんだのは実が落ちないように枝を固定することでした。

(タダシ)「そうか、枝を揺らされないように枝を縛ったらいいじゃないか」。

早速タダシは全ての木の枝を縛りました。

(タダシ)「よし、これでいい。もう一度来てみろ。どんなに揺らしてもビクともしないだろう」。

しかしその日以降カササギが再び来て枝を揺らすことはありませんでした。

ところが、それから間もないある日の夜、突然強い雨が降り始め、激しい風が吹き始めました。この地方で数年に一度発生するという大嵐でした。雨風がとても激しく、雷も鳴り止まないので、農夫たちは皆果樹園に行くことはできず、宿舎で待機せざるを得ませんでした。

嵐が過ぎ去って、また農夫たちが果樹園に戻ってくると、多くの農夫たちが悲嘆に暮れていました。タダシが彼らの任された木々を見てみると、激しい風で皆実が落ちてしまっていました。

(農夫2)「なんてことだ!この地方ではこんなに強い風が吹くだなんて知らなかった。せっかくなっていた実がほとんど落ちてしまった…」。

タダシはまたも自分がすんでのところで難を免れたのを分かって、ほっとしました。

(タダシ)「ああ、危なかった。僕が管理している木も実を落としてしまうところだった。偶然枝を縛っておいたから助かった」。

するとタダシの頭の上をカササギが「カカカ」と笑うように鳴いて飛んでいきました。タダシは一瞬上を見上げましたが、自分の持ち場に戻って落ち葉を片付けながら考えました、

(タダシ)「さて、もうすぐ収穫だな。特にやることもないし、雑草でも抜こうかな」。

そうしてタダシが雑草を抜いていると、何やら誰かに見られているような感じがして、振り返ってみました。しかし、誰も見当たらなかったので、タダシはまた雑草を抜き始めました。すると、また後ろからカサッという音が聞こえました。タダシは振り向きましたが、やはり誰も見当たりませんでした。しかし、ふと木を見上げて見ると、なっていた実がいくつかなくなっていることに気が付きました。

(タダシ)「ああ、実を持っていかれた!苦労して育てたというのに!」

タダシは泥棒に実を盗まれたので、どうしたら実を守ることができるかを考えました。

(タダシ)「こうなったら木を生け垣で守るしかない。それも急いで作らないと。はぁ…大変だ。でも、やるしかないんだ」。

タダシはそれから数日間、ひたすら生け垣を作るために汗を流して働き、遂に自分が任されている果樹園を囲う生け垣を完成させました。タダシはやっと一息ついて休みました。収穫の時はもうすぐそこまで来ていました。

ABOUT ME
マシュー
自分の持っているものを使いたい。神様のために生きたい。それが小さな自分にもできる大きなこと。「この人生を後悔のないように生きるにはどうしたらよいのだろう」と、かすかにくすぶる火種のような、ささやくそよ風のような一人の地球の民。