タダシとその妻トモヨは次の日から一緒に畑に行って荒れ果てた畑の掃除を始めました。二人で毎日毎日雑草を刈って引き抜きました。何日も何日も続けて働いて、ようやく雑草がきれいになくなりなりました。
さて、雑草がなくなったところで、目の前にあるのは石ころだらけの畑でした。二人はまだまだ先が長いと感じてつらい気持ちになりましたが、将来の希望をその畑にかけてまた二人で一生懸命石ころを拾って一箇所に積み、ある程度溜まっては、金持ちの土地の外に捨てに行きました。何日も何日も続けて働いて、ようやく石ころがきれいになくなりました。
石ころがなくなったところで、今度は畑を耕さなければなりませんでした。これが終わればようやく種を撒くことができると思って、二人は一生懸命耕しました。何日も何日も続けて耕して、硬かった土もようやく柔らかくなりました。
(タダシ)「やった!なんてしんどい作業だったことか!でも、遂に終わったぞ!」
さて、喜びも束の間、もう種まきの季節が終わりかけていたので、二人は急いで柔らかくなった土に種を撒きました。荒れ果てていた畑の整理から種まきまでが、ようやく一段落しました。
(トモヨ)「これでようやく種まきが終わりましたね。ここからはいつもどおりですね。たくさん収穫できると良いですね」。
タダシはそこからいつもどおり丁寧に穀物を育て、トモヨはまた山に行って山菜と木の実を集めました。
夏になり、日が暖かく降り注ぎ、時には雨も降って、穀物が成長する時期になりました。ところが、タダシの畑の穀物は少ししか背が伸びませんでした。これでは収穫の時期に多くの実を実らせることは難しそうでした。
(タダシ)「どうしてだろう。いつものように丁寧に顧みて育てたのに…」。
タダシはそこで初めて、周りの人たちがその畑が悪いと言って捨てた理由が分かりました。
(タダシ)「ああ、皆がこの畑を捨てたのは本当に穀物が育たなかったからなんだな…。こんなに一生懸命掃除したというのに!なんでこんな目に遭うんだ!」
その時、頭の上を青色のカササギが鳴きながら飛んでいきました。タダシは飛んでいく青いカササギを見ながら言いました、
(タダシ)「あれはカササギなのか?鳴き声はそう聞こえたけど、青いカササギなんて見たことないな。もしかして別の鳥なのかな。まぁ、いいか。そんなことよりこの状況は悔しいなぁ…」。
タダシはとぼとぼと肩を落として家に帰りました。タダシが畑で穀物が育たないことをトモヨに話すと、トモヨもそれを聞いて悲しみ、家は暗い雰囲気になりました。
(トモヨ)「そうですか、二人して一生懸命働いたのに、残念ですねぇ…。今年はまだ食料の蓄えがあるから良いですが、これからどうしたものでしょうか…」。
翌日、トモヨがまた暗い気持ちで山を歩いていると、またそんな暗い気持ちがカササギのことを思い出させました。
(トモヨ)「ああ、あのカササギさんがこの話を聞いたら今度は何て言うかしら」。
トモヨはまた山奥の祠に向かいました。祠の前に行くと、またカササギが話しかけてきました、
(カササギ)「お嬢さん、ご機嫌よう。あなたがここに来たのはまた悪い知らせのためですか?」
(トモヨ)「カササギさん、あなたは私の心を見透かしているかのようです。夫が追いやられた畑は本当に悪い畑でした。一生懸命雑草を抜き、石も捨ててきれいにして、それから休む間もなく土を耕して、やっとのことで種を撒いたというのに、穀物が全然大きくならなかったのです」。
(カササギ)「それは気の毒ですね。見た目は他の畑と同じなら土が悪いのではないかな。ひょっとして畑の中に何か変なものが埋まってたりして。カカカ。では私は忙しいのでまた今度」。
そう言うとカササギは飛び去ってしまいました。トモヨは家に帰って、タダシにカササギの言葉を伝えました。
(トモヨ)「あなたの畑で穀物が育たないのは、もしかしたら土が悪いのかもしれません。ひょっとしたら何か変なものが埋まっていたりしないでしょうか」。
タダシはその言葉を聞いて、翌日試しに畑を掘ってみることにしました。
(タダシ)「どうせ穀物は育ってないんだ。深く掘って見てみよう」。
タダシが深く畑を掘り起こしてみると、鍬(くわ)が何か硬いものに当たりました。
(タダシ)「なんだろう、岩でもあるのかな」。
タダシが続けて掘ってみると、錆びた鉄の箱のようなものが出てきました。タダシがそっとその箱を開けてみると、中にはたくさんのお金が入っていました。タダシは驚いて、慌てて箱をまた埋めました。そうして、他の場所も同じように掘ってみると、その箱と似たような錆びた箱がいくつも出てきました。
(タダシ)「わぁ、なんてことだ!まさか畑にお宝が隠されていたなんて!この箱のせいで穀物が育たなかったのか!」
タダシは箱を畑に埋めて、何事もなかったかのように家に帰りました。そしてトモヨに言いました。
(タダシ)「大変だ!畑に錆びた箱がいくつも埋まっていて、中にはお金がたくさん入っていたんだ!」
(トモヨ)「まぁ!それはなんて幸運なのかしら!今夜にでも人知れずこっそりと運んできましょう」。
二人はそれから夜のうちに畑に行って、ひそかに箱を持ち帰ってきました。
(タダシ)「苦労した甲斐があった。あの荒れ果てた畑を任されたのも何かのめぐり合わせだっったのかもしれない。これでもうお金の心配はしなくて良さそうだ」。
その年の冬は結局タダシの畑には収穫がなく、分け前もありませんでしたが、二人はとてもうれしい気持ちで贅沢な暮らしをしながら冬を越しました。
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