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動物たちの愉快な日常
童話

童話『農夫と青いカササギ』〜第二章 金持ちの男に雇われる〜

さて、一年が経ち、例年どおりタダシの狭い土地にはたくさんの穀物が実って、なんとか食べていけるくらいの収穫はありそうでした。さて、タダシが畑で穀物の手入れをしていると、あるお金持ちの男がたまたま山を越えていこうとタダシの畑の前を通り過ぎました。金持ちの男はタダシの狭い畑にたくさんの穀物が実っているのを見て、自分の畑で働かせようと思って声をかけてきました、

(金持ち)「もし、農作の腕は立つのかね?こんな狭い土地ではいくら腕が良くても収穫はたかが知れているんじゃないか。私の広い畑の一部を君に任せよう。それでその収穫の一部を自分の取り分として受け取るのはどうかね。そうしたら今よりはずっと多く稼げるだろう」。

タダシはそれを聞いて喜び、その金持ちの男の畑で働くことを承諾しました。タダシは心の中で言いました、

(タダシ)「なんて運が良いのだろう。たまたまお金持ちの男性が通りかかって私を雇ってくれるとは…」。


タダシは早速金持ちの男の畑で働き始めました。タダシは今まで自分の畑でやっていたように熱心に働き、一緒に働いていた小作人の中で誰よりも多くの収穫を得ました。金持ちの男はタダシが上手に穀物を育てるのを見て、さらに多くの土地を任せるようになりました。そうしてタダシはさらに多くの収穫を得て、多くの分け前をもらいました。

(タダシ)「これまでの苦労は無駄じゃなかったな。前は自分の小さな畑を必死に耕してやっとのことで食べていたけど、これくらい稼げるなら今後数年は食べ物の心配はしなくてよいくらいだ」。

さて、タダシがたくさんの分け前をもらうようになると、他の小作人たちはタダシを妬むようになりました。そして皆揃って金持ちの男に訴えました、

(小作人A)「ご主人様、あなたは公平な方であって、私達皆に平等に取り分を約束していることを知っています。しかし、タダシがそれに従ってが多くの分け前をもらうのは公平ではありません。なぜなら、彼の畑は肥沃で、私達の畑よりも穀物の育ちがずっと良いからです」。

金持ちの男は答えました、

(金持ちの男)「私は彼の腕が良いゆえに多くの収穫を得ていると思ってより広い土地を任せたのだ。それなのにあなたがたはそれを彼の畑が良いからだと言うのか。ではどうしろと言うのか。彼だけ収穫に対する取り分を少なくしろとでも言うつもりか」。

小作人たちは答えました、

(小作人A)「タダシの畑が肥沃であることを私たちは皆知っています。ご主人様の畑の中で最も悪い場所を彼に与えてみてください。もし彼が本当に有能であるならば彼はその畑からも豊かに収穫を得てご主人様を喜ばせることでしょう」。

そこで金持ちの男は言いました、

(金持ちの男)「面白い。ではそうしてみよう」。

あくる朝、タダシは今まで任されていた広い畑から他の畑に移るように言われ、金持ちの男が持っている中で最も悪い畑にやってきました。その畑は穀物を実らせないというので誰も耕さず、雑草と石で荒れ果てていました。

(タダシ)「これはひどい畑だな。荒れ放題じゃないか。こんな畑でどうやって農作をすればよいのだろう。ああ、なんでこんなことに…。僕が何か悪いことでもしたというのか」。

タダシは自分の目の前に大変な労苦が待ち受けているのを分かって悲嘆に暮れました。そして家に帰って妻にこのことを話しました。妻のトモヨは話を聞いてタダシと共に悲しみました。

(トモヨ)「せっかく頑張って報われたと思ったのにねぇ…。これから数年は今までの稼ぎでなんとかなるけれど、その先はどうしたらよいものか…」。

タダシは翌日また金持ちの男から任された畑に戻って、仕方なく雑草を刈るところから始めました、

(タダシ)「ああ、大変だ。土を耕すことさえできない。やっぱりここで働くのをやめて家に帰ろうか」。

その頃妻のトモヨは山に山菜や木の実を採りに行っていました。トモヨは不毛な畑で働くタダシの姿と今後の食料のことを思って憂鬱な気分で山を歩いていましたが、ふと以前不作で山の奥深くまで山菜や木の実を採りに行った時のことを思い出しました。

(トモヨ)「そういえば、あの青いカササギはどうしているかしら」。

トモヨがカササギを探しにかの古びた祠の近くまで行くと、突然上から声が聞こえました、

(カササギ)「お嬢さん、ここで何をしている?」

トモヨはあの青いカササギだと分かって答えました、

(トモヨ)「カササギさん、あなたのことを思い出したので、ここまで来ました」。

カササギは答えました、

(カササギ)「キノコのありかはもう教えたでしょう。何をしにきたのですか?」
(トモヨ)「何をしにきたとかではなく、ただあなたのことを思い出したので…」。
(カササギ)「カカカ。何もなく思い出すなんてことがありますか。さてはまた憂鬱な出来事でもあったのでしょう」。
(トモヨ)「実は、あの後夫がお金持ちの男性に雇われることになり、その人の畑を耕して、その収穫の一部をもらって暮らすようになりました。夫が腕を認められて少しの間豊かになったのですが、最近になって突如として不毛な畑に追いやられてしまったのです」。

(カササギ)「はいはい。追いやられたというなら私も同じ身の上ですよ。まぁ、この話はまた今度ということで。それで、私に一体何の御用かな?」
(トモヨ)「その畑があまりに荒れていて希望が見い出せないので、その場所を離れて家に戻ってきて元のように自分の土地を耕すのがよいのか、そこで働き続けるのがよいのか迷っています」。
(カササギ)「ふむふむ。では家の畑に戻ったら将来の希望がおありなのかな?」
(トモヨ)「今はありませんが、まためぐり合わせがないものかと思って…」。
(カササギ)「カカカ、面白い!では今帰ってあなたの畑をご覧なさい。それで決めたらよいでしょう!」

そう言うとカササギは飛び立ってしまいました。仕方なくトモヨもそこを離れて自分の家に帰りました。家に着いて、今後どうしたらよいかと考えながらなんとなく自分の畑を眺めに行くと、驚くべき光景が目に飛び込んできました。なんと、家の畑が雑草と石で荒れ果てていたのでした。

トモヨはその光景を見ながらなぜ畑がこうなっているのか考えました。数年間タダシが金持ちの畑を耕して自分の家の畑を耕していなかったからそうなったと言われたら、確かにそうかもしれないけれども、だからといってたった数年でここまで荒れるだろうかとも思いました。しかし、いくら考えてみたところで答えは出ませんでしたし、答えが出たところでその荒れた畑がきれいになるわけでもありませんでした。

そうこうするうちにタダシが家に帰ってきました。トモヨはその荒れ果てた畑をタダシに見せながら言いました、

(トモヨ)「ご覧なさい。私達の家の畑が荒れ果てています」。

タダシはその光景を見て衝撃を受けて言いました、

(タダシ)「いつの間にこんなに荒れてしまったのだろう!これでは家で畑を耕すのも、今任されている荒れた畑を耕すのも同じことだ!」

トモヨはカササギが言ったことを思い出して、タダシに言いました、

(トモヨ)「家の畑を耕しているうちにまた幸運が巡ってくるかもしれないと希望をかけましたが、その道も閉ざされているようです。こうなっては今任されている畑をきれいに整えて農作をするしかありませんね。私も畑の掃除を手伝いましょう」。

タダシとその妻トモヨは金持ちの男から任された荒れ果てた畑を整理して農作をすることを決心しました。

ABOUT ME
マシュー
自分の持っているものを使いたい。神様のために生きたい。それが小さな自分にもできる大きなこと。「この人生を後悔のないように生きるにはどうしたらよいのだろう」と、かすかにくすぶる火種のような、ささやくそよ風のような一人の地球の民。