CGM New Harmony Church

動物たちの愉快な日常
日常

選挙と家族の思い出

去る5日日曜日は都知事選の日だった。
選挙の時期になると思い出す事がある。

自営業だった実家は、自宅の1階の半分ほどのスペースで両親が商売をしていた。コーヒーの小売店だったので、いろんなお客様にいらして頂いていたが、政党の事務所の方々も贔屓にしてくださっていた。

選挙が近づくと、この方たちとの話題はもっぱら選挙の話題になる。〇〇党の事務所の方には、父は「〇〇党の△先生、応援しています」と話し、■■党の事務所の方には、「■■党の◎先生にはお世話になります」と挨拶をしていた。

ある選挙が近づいた日の夜、家族で食卓を囲みながら、選挙の話になった。
父「やっぱり○○党がいい。日本を経済大国に導いた実績がある」
母「いや、生活を考えてくれるのは■■党だと思う。私は■■党に入れる」
私「私は□□党かな。何だか新しい感じがするし」
選挙の話から家族みんなで笑いながらいろいろ話した夕食後のひとときは楽しい思い出だ。

そして選挙の当日が来た。投票を終えて、その日の夕方、家族で開票速報を見ていた。誰が当選したかは憶えていないけれど、それぞれ誰に入れたという話になった。やはり、父は○○党に、母は■■党に、そして私は□□党に入れていた。

その週も政党の事務所の方々が来店して下さった。学校が早く終わったか、休みだったか記憶は定かではないが、その週私は家にいる時間が長かった。店と住居が隣接していたので、部屋でテレビを見ながら、親の仕事を横目で見ていた。父は、○○党の方が来られると「○○党の△先生に1票入れさせて頂きました」と挨拶をしていた。そして、■■党の方が来られると、「■■党の◎先生に1票入れさせて頂きました」と挨拶し、□□党の方が来られると、同じように「□□党の◇先生に1票入れさせて頂きました」と挨拶していた。

夜、父に「お父さんが入れたのは1票だけなのに、どの党の人にも同じ挨拶していた」とつっこむと、父は何も言わずに笑っていた。

あれから20年以上が経ち、親は老いて、店もたたんでしまった。
「商売をしてるから、みんなと仲良くしないといけないんだ。敵を作っちゃいけないんだ」そう言いながら、どんなお客様にも愛想よく笑顔で接していた父がたびたび話してくれた言葉が、先生の和睦の御言葉にちょっと重なる気がする。お互いのいいところを見て、どんな人とも仲良くして生きていきたいものだ。

ABOUT ME
あおぞら
早稲田在住。会社員。好きなことは神田川沿いを走ったり歩いたりすること、バレーボールとサッカー、教会の人たちとのお出かけ、母とのおしゃべり、食べること、料理。